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僕の夏休み 4
2010-08-11 Wed 02:18
何でこんなことになってしまったのだろう。


白川駅には9時半前に到着した。
言いだしっぺの私が遅刻をするわけにはいけない、というのも理由の一つではあるが、しばらく感じたことの無い高揚感に、家にいてもなんだかそわそわと落ち着かなかったのだ。
なんだっけこれ?遠い昔に感じたことがあるような懐かしい感覚。

約束の10時まで少々時間があるので、私は駅周辺を探索することにした。
白川はごくごく普通の街だ。
畑と田んぼに囲まれたド田舎でもなく、かといって大きなデパートがあるような都会でもない。
生活に困らないレベルの大型スーパーぐらいならある、私の地元とは大違いの住みやすそうな街だ。
私の地元の話は今はひとまず忘れておこう。
駅周辺はわりと賑やかだ。
駅前の商店街には様々な店がひしめき合い、白川高生たちの寄り道の定番スポットになっていた。
・・・実際に私はまだ一度も行ったことが無いけれど。
夏休み1日目の午前中、街中に当然のことながら白川高生の姿は見えない。
たとえ部活か何かで数人の生徒が通りかかったとしても、私服姿の私が目立つことはない。
思う存分一人では、一人だからこそ行けなかった商店街を探索しよう。
スタートラインのマックを確認。今日の集合場所だ。
続いて進むとクレープ屋にゲームセンター、ファミレスにカラオケ店などがあり、まるで我が校の生徒のためにラインナップされたかのように寄り道のネタが充実している。
駅から遠くなるにつれて、食品スーパーや雑貨店など、地元住民のためのお店が増えてくる。
しかし時間的に開店前の店が半数以上のため、さしあたって入る店もなく10分程度で最終地点のコンビニに到達した。
「仕方ない、戻るか」
Uターンをして、今来た道を逆再生。
アスファルトが時間とともに熱を帯びてくる。太陽もだいぶ高く昇り始めた。今日も暑くなりそうだ。
よく見るとこの商店街はやけに美容院が多い。
この街の人は髪が伸びるのが早いのかもしれない、と温まった頭でぼんやり考える。
と、その時、視界の隅に光るものを確認した。
美容院と居酒屋の間の路地でそれは光った。
太陽の光で反射したのか、もしくは「ソレ」自体が発光しているのか。
見て見ぬふりを出来る形ではなかった。

人だ。・・・女の子だ。

その少女は居酒屋の裏手のゴミ捨て場、大きなポリバケツの陰に身体を隠し、路地に頭を投げ出す形で仰向けに倒れていた。
光って見えたのは人形のような長い琥珀色の髪の毛だった。
慌てて駆け寄り顔を覗き込み、私は息をのんだ。
年齢は私と同じぐらいだろうか。
かたく閉じられた漆黒の長いまつげ、陶器のように白く美しい肌、人工的な艶感の桜色の唇。
パーティーで着るようなピンク色のドレスを着たその美少女は、昔絵本で見たお姫様そのものだった。
「人形・・・?」
・・・なわけがない。
見たところ怪我もなく、息もしているがこの場合どうしたらいいのだろう。
「大丈夫ですか?」
耳元で呼ぶも反応なし。
「起きてくださーい!」
身体を揺すって耳元で叫ぶ。
すると
「うーん。眠い・・・」
むにゃむにゃと何か言いながら、少女は実にウザったそうに眉間に皺を寄せて私から顔を背けた。
眠っているだけだな。
安心して一息つくと、視線の先に彼女の物と思われるミュールが転がっていた。
常識的にヒールは当てないでおこう。
「起きろ!!」
パコッ!!
小気味よく衝撃音が響く。
「痛っ!!え?・・・何??」
少女は驚いて額を抑えて身体を起こした。
そして私と目を合わせて、約3秒のフリーズの後こう言った。
「・・・ここはどこ」

こんなことなら交番の場所を確認しておけばよかった。






暑い。背中が暑い。
私は今、姫君を背中に背負って全速力で商店街を駆け抜けている。
体力には自信があるが、二人分の体重を乗せた夏場の全力疾走はかなりのパワーを使う。
異様な光景だろう。姫コスプレの女を背負う汗だくの女。仮装パーティーと借り物競走を混ぜたような姿に、すれ違う皆さんからの注目度は絶大だ。
ゴミ捨て場を後にする際に姫君の小さなビーズのバッグは見つかったが、私が拝借した相方、ミュールの片一方がどうしても見つからなかった。
腕時計を見ると約束の時間ギリギリだった。
先を急ぎたかった私は自ら姫君の馬車役志願をし、こうして私の背中の上に乗せる運びとなった。
「携帯番号聞いとけばよかったな」
「誰のー?ってゆか何でいきなり走り出したー?」
「約束してるの」
息を切らせて答える。
「友達とー?」
呑気なお姫様は頭の上から微妙な質問をしてくる。
「さぁね。でもあなたのことも聞きたいし」
眠り姫は目覚めて第2声目に「おなかがすいた」と言ったきり、自分に関するデータを一向に喋らない。
二つ三つ質問をしたが、曖昧にかわされてしまった。
「警察はいや」と言っていたが満腹になったら気が変わるだろうか?
そのためにもまずはあの二人に警察の場所を聞こう。
その前に二人はちゃんと来てくれるのだろうか?

不安と期待と疲労感でいっぱいになりながら、私は目的地を一直線に目指した。
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