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僕の夏休み 2
2010-06-03 Thu 01:45
「遅くなってスイマセン」
抑揚の無い声で遅刻を詫びた人物は我が2年A組が誇る超優等生生徒会長、相田由貴也だった。
そして当然のように俺の隣に並んだ。
でもまぁこいつは別件で来たんだろう。
何事もなく、むしろ全校生徒の規範となるような学校生活を送っているこいつは夏休みを楽しむ側の人間だ。
「ユッキーどしたの?」
率直な疑問をぶつける。
「補習に決まっているだろう」
「は?ユッキーが化学のテストで一桁なわけがないでしょ」
「いや・・・ヒトケタというより0点だ」
涼しい顔をしてこいつは何を言っているのだろう。
一年の時から成績は学年トップでスポーツ万能、全校生徒の満場一致で先日生徒会長に選ばれたばかりの優等生。
帰国子女で語学も堪能、おまけに顔も良しで女子に大人気。
完璧すぎて正直ちょっと苦手なタイプ。
そんな奴が0点なんて馬鹿(俺)でも取れない点数を取るなんて。

俺は思い出していた。
出席番号順に並んだ席順。
全教科のテストを開始5分で諦めた俺の前の席で、まるで機械の様に淀みなくペンを走らせていたこいつの後ろ姿を。
「ユッキー、欠席してないよね」
「あぁ。ちなみに欠席が理由で0点にはならない。欠席は再試験だからな」
「じゃあ名前でも書き忘れたのか?」
「そんな理由で0点にしないわよ」
ユッキーのかわりに森山が答える。
「解答欄・・・書いてくれたわよねぇ。たくさん」
森山が含みのある視線でユッキーを捉える。
「あぁ、宮村せれなの『ラブ☆トゥインクルガール』の歌詞をな」
は?
「ラブ・・・・何だって!?」
「トゥインクルガールだ。二番のサビがどうしても思い出せなくてな。はじめから書きだしていたんだ。ようやく思い出した時にはチャイムが鳴っていた」
「鳴っていた。じゃねーよ!そんなのテストの後でいいだろ!」
「気になったらすぐに解決しないと気が済まない性格でな。直後の休み時間に携帯で検索したら思い出した歌詞が正解だったので俺は満足したよ。実に有意義な時間だった」
待て。何を言っているんだこいつは。
頭がクラクラしてきた。
「化学の試験問題より解きがいがあったぞ。ざっと問題を見た感じでわからないところは無かったが、それをヒトケタって・・・井上、お前大丈夫か?」
「お前に言われたくねーよ!!」
前言撤回。
今までこいつとは表面的な会話しかしたことが無かったから気がつかなかったけど、この超優等生はとてつもなく馬鹿だ。
「ということで相田君も仲間なのよ。他の教科はほぼ満点なのにねぇ。初の首位転落に他の先生方も驚いてたわ」
森山がため息をつく。
・・・ユッキーは馬鹿というより変人なのかもしれない。
「補習といっても明日から一週間だけだから。先生もバレー部の顧問だから夏休みは何かと忙しくってね。まぁ頑張りましょう」

その瞬間携帯の着信音が鳴り響いた。

「ごめんちょっとまってね」
慌てた様子で立ち上がったのは森山だった。
白衣のポケットから携帯を出すとそのまま職員室を出て行ってしまった。
しかしドアのすぐ外で通話をしているのだろう。会話が途切れ途切れに聞こえてくる。

「・・・・・うん、・・・・うん。・・・ホント?・・・もちろんだよ。嬉しい!」

電話の相手は男だろう。普段より1オクターブ声が高い。

「こっちはなんとか。・・・・ホントに大丈夫だから!!またこっちから電話するね!」

短い通話を終えて森山が戻ってくる。
どことなく足取りが浮かれている。
「・・・とゆうわけで、先生は明日から1週間オーストラリアに行ってきます。補習は無くなりました!」
「「「はい?」」」
あまりの唐突さに今まで置物の様に微動だにしなかった藤野でさえツッコミを入れた。
「あのね、行く予定はかなり前からあったんだけど、一緒に行く彼氏と大ゲンカしちゃって・・・・もうダメだと思ってたのね。でもね、今電話でやりなおそうって言ってくれたの!しかも彼ったら旅行もキャンセルしないでくれてたの!先生39歳なの!最後のチャンスなの!わかってくれるわよね?」
「「「さんじゅうく?」」」
またしてもハモッてしまった。
無理もない。目の前の女教師はどう見積もっても20代にしか見えない風貌なのだ。
「先生だって幸せになりたいー!」
感情を露わにする姿はもはや子供のようだった。
なんて自由奔放な教師なのだろう。
しかしこちらとしてはありがたい。貴重な夏休みの1週間が戻ってきたのだ。
「せんせーお土産ヨロシクねー!」
「どうぞお幸せに」
「道中気をつけてくださいね」
俺達は晴れやかな気持ちでドアに向かおうとした。
しかし世の中そんなに俺に甘くないみたいだ。
「待ちなさい。他の先生方の手前何もしないわけには・・・・このままだと留年しちゃうし・・・・・そうだ!!補習のかわりに各自で化学の自由研究ってことで!」
「化学の自由研究って難易度高くない?何すればいいの?」
課題を考えるところから時間がかかりそうだ。
それならまだ一定時間座っているだけで義務の果たせる補習のほうがマシだ。
「朝顔の観察でいいですか?」
藤野が真顔で尋ねる。彼女も同類だろう。
「そうねぇ・・・・相田君がいれば大丈夫でしょう?」
森山はユッキーの顔を期待を込めて見つめた。
「3人で頑張りなさい!はい、決定」
誰の返事も聞かずに崖っぷち女教師は満面の笑みで俺達を職員室から送り出した。

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